ジャマイカ戦終了後、誰もが言葉少なだった。私達は朝まで渋谷で飲んでいたが、 何を話していたのか今ではもう思い出せない。けれど明け方、城ファン サイトを運営する友達の元に、恐れていた「事態」が伝わった。 ついに「荒らし」たちが掲示板にやってきたというのだ。 今まで発見されることなくほとんど荒らされなかったことの方が奇跡だったのかもしれない。「とうとう 来たか・・・」という諦めの気持ちと、言い様のない憤り。 始発で帰宅しアクセスしてみると、あるわあるわ、下品で卑猥で凶悪な書き込みが。 私達が取った対策は「完全無視」そして「発言削除」だったが、それもいたちごっこ。 結局、ウェブマスターはＵＲＬを変更し、問い合わせのあった人にだけＵＲＬを 知らせる方法で荒らしが来るのを防いでくれた。荒らし達の嫌がらせに負けて 完全閉鎖するなんて絶対に嫌だった。そのサイトがあったからこそ、 多くの仲間たちに勇気付けられたし、その後も続く城バッシングにも 耐えることができた。 一番辛い思いをしたのは城だし、城の苦悩を思えば自分達に振りかかったいやがらせも 何てことない。これからも変わらずに城を応援していこうと固く思った。

当時インターネットを利用していなかった相方は、サイバースペースでのバッシング騒動を 「下らない」の一言で片付けた。誰とも知れない仮想空間相手に、何を ムキになって神経をすり減らしているのか？と。確かに、端から見ればそうだったもしれない。しかもその論議の的は、たかが「サッカー」。 巻き込まれたくなければ、掲示板など見ずにバッシングを無視していればいいのだ。 けれど、私がネット上で交流しているのは観戦仲間を中心とした生身の人間である。 たとえ会ったことがない人でも、城を応援する思いで繋がっている仲間たちだった。 あるいは、もっと広くサッカーを愛する人達との交流の場でもあった。 仮想空間は虚無ではない。そこには、確かに私達の「居場所」があるのだから。だからこそ、匿名性の陰に隠れて陰湿な悪戯で他人を傷つけ笑っている 連中から、自分達の居場所を守りたかっただけなのだ。