監督：アンドリュー・ラウ（劉偉強）
主演：レオン・ライ（黎明）、瀬戸朝香、テレンス・イン（尹子維）、リチャード・サン（孫國豪）
待ちに待ったレオンの新作映画、日本公開！しかも日本人女優との共演で、マスコミへの露出もアップ！2001年東京国際ファンタスティック映画祭でも上映された。
『バレット・オブ・ラブ』（不死情迷）公式ホームページ
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●あらすじ●
香港警察特殊部隊のサムは、３年に渡る捜査の末に、密入国や麻薬密売組織のトップ、ナイトを逮捕する。サムの恋人で検事のアンが事件を担当し、ナイトは禁固刑５年に。運良く逃げられたナイトの兄デイは、サムとアンを逆恨みする。パリで休日を過ごすサムとアンは結婚の約束をするが、その幸せを破る三発の銃声。アンは何者かに撃たれ、命を落としてしまう。失意のサムは警察を引退し、ランタオ島ダイオーに移り住んで叔父や友人たちとの穏やかな暮らしを送っていた。そんなある日、アンに生き写しの日本人カメラマン、ユウと出会う。仕草や行動までアンに似ているユウに戸惑いを覚えながらも、次第に惹かれていった。
●レオンのツボ●
実際に１０針も縫ったという、ガラスに突っ込んで流血する冒頭のシーン。本物だと分かっているからか、雨に混じって滲む血、苦痛に歪む顔がリアルで痛々しい…。本人は切ったことが分かってるはず。それでも演技を続ける役者魂！素晴らしい！顔に怪我がなくて本当に良かった…。しかし香港映画って無茶するなぁ（苦笑）レオンのアクションシーンは、その冒頭と、後半、二回だけ。レオンは、ピストルを撃つ姿が凛としてかっこいいから（人殺しの道具なのに…不道徳な私）、もっとアクションが見たかったな。
アンが法廷で「私の恋人は一晩に６回」と言ったとき、目を泳がせるサムが面白かった。（だからパリ旅行の時もベッドのシーンが何回もあったのかな…？）
アンとラブラブムードなのは当然として、ユウのことを意識し出したサムがおずおずと指に触れるところ、手を繋いでユウの部屋に急ぐところは、切なくていじらしい。それからユウとベッドを共にするところ…、いやーん、もう何でそんなにセクシーなの！？o(≧▽≦)o ジタバタ！キスシーンなんて、シルエットだけなのに、甘く美しく、そして官能的。瀬戸朝香のファンはどう見たのかな。
全体はシリアスなところが多くて、アンを救えなかったサムの表情が出色。目の前の出来事に動転し、自分への苛め、無念さ、そんな複雑な感情が伝わってきた。他にも、ユウの過去を知る場面や、ユウが最後に取った意外な行動、ラストシーンなどなど、すごく難しい役どころだったと思うけど、なんか、ますます演技に磨きが掛かってるみたい。
●映画のツボ●
この監督独特のスタイリッシュな映像、演出はなかなか良かった。展開にはちょっと無理もあるし、どこかで似たようなのを見た気がするモチーフが多いけど、しっかりした作り。音楽のセンスも好み。
ユウの正体が謎で、それが映画の重要なポイント。ユウの仕事がカメラマンで、レンズを通して被写体を追うことが、実は彼女の正体を知る隠喩だったと思う。瀬戸朝香が頑張ってて、レオンはそれを懐の深い演技で受け止めてる感じ。アクションシーンも瀬戸朝香の方が見せ場が多かった。瀬戸朝香の前半のアン役は吹き替えになってしまったけど、後半のユウ役では長い広東語の台詞で熱演していた（とは言っても、たどたどしい発音なのでユウって一体何人なのか？？？わたし的には、アンの死んだ理由をサムに尋ねるユウが白々しく思えて…、台詞だけで過去が語られるよりも、予め過去のユウの生き様や人物像（人の愛し方を知らない不器用さとか）をもっと描いてくれた方が感情移入できたかも。
お調子者のバンドメンバー（あの後無事だったのか気になる！）、カンフーマスターだった叔父さんと、その弟で智慧遅れのアフーなど、脇役たちのキャラも良い味出してた。それから、敵対する街同士の抗争かと思いきや、相手はちびっ子サッカーチーム、というシーンは吹き出しちゃった。あまりにも大人チーム下手すぎ。でも、ボールを追いかけてるレオンは本当に楽しんでるみたいで微笑ましい。
デイ＆ナイト兄弟を演じたテレンス・インとリチャード・サンは、今までの香港映画にはなかったタイプのクールでスマートな悪役で、ぶっ飛び方もヤバイくらい。存在感あるテレンス・インは、なにげに気になる役者だ。
『情迷大話王』に出てきたリンポチェ（チベット仏教僧）が、ここでもお坊さん役だったから、パラレルワールドみたいで不思議な感じ。それから、ウォン・カーウァイの監督デビュー作『いますぐ抱きしめたい』の１シーンとすごく似てる場面があった。アンドリュー・ラウはこの時撮影監督で参加しているから、もしかしたら…香港映画ならではの遊び心なのかな。単に設定が似ちゃっただけかな。今度『いますぐ〜』を見直して確認してみよう。
日本人女優との共演でレオンの知名度アップ！！と期待した割に、観客動員は苦戦したらしい…（後半盛り返した？）。英語タイトルそのままの邦題は良くないよ〜。「バレット」（弾丸）って馴染みのない単語だし、ファン以外の一般層にアピールするためにも、邦題は工夫しないと。頼むよ〜GAGAさん！
（『恋する惑星』なんて、題名でどれだけ得をしてるか…。私には甘ったるすぎるけど）
追記
スカパーの某映画専門チャンネルで、公開中映画を多数紹介する番組を見ていたら、『バレット・オブ・ラブ』では、「レオン・ライの恋愛映画を見たい人に」とのお薦めコメントが…。隣にいた相方が「瀬戸朝香の見所はないの？（笑）」とすかさずツッコミを入れた。
それもそうだけど、これじゃまるで、出演者目当ての人しか見る価値がない、と暗に言っているよう。映画の感想なんて人それぞれで、他人の見方なんか気にする必要ないけど、こういう映画紹介で大勢の人に「見てみたいな」と思わせるコメントを貰えるかどうかは影響が大きい。
今回の映画は良いところも沢山あったし面白かった。でも確かに、いち映画ファンとして客観的に言えば、「平均的な香港映画」では日本でヒットするのは難しいだろう。レオン・ライという素材、役者としての表現力を高く買っているからこそ、ついつい欲張って、その良さを多くの人に伝えられる質の高い映画と巡りあって欲しいと思ってしまう。五月蠅いファンで申し訳ないが（2001.11.26）