ピーター・チャンがプロデュースした、韓国・タイ・香港、三カ国の監督によるオムニバス映画。チャン監督自身も香港編「ゴーイング・ホーム」（回家）を担当、「ラブソング」の名コンビ、レオンを主役に迎えた期待を裏切らない出来映え。
日本劇場版の作品順は、韓国編「メモリーズ」（記憶）／タイ編「ホイール」（輪廻）／香港編、です
★恐ろしくも哀しい純愛映画★ レオンはこの作品で初めての最優秀男優賞（台湾金馬賞）を受賞！
監督：ピーター・チャン
主演：レオン・ライ、ユージニア・ユアン、エリック・ツァン
いちおうホラーなんだけど、最後には切ない純愛映画のよう。これだけで独立した作品にしてもおかしくないし、なっていないのが本当に惜しい。
●あらすじ●
刑事と幼い息子が取り壊し間近の集合住宅に移り住んだ。ある日忽然と姿を消した息子を探して向かいに住む男の部屋を訪れた刑事は、男の秘密を知ってしまう。男は、妻の蘇生を信じて死体の世話をしていた。
●レオンのツボ●
これがレオン！？ってくらいに、薄気味悪い男そのもので、黒縁眼鏡もくすんだ作業着みたいな洋服も、本当に冴えない。ちょっとショック。アイドルの面影なんて全然ない。狂気と純粋さを合わせ持った男の淡々とした様子は、凄みさえ感じさせた。
ところが、映画が進んでいくと話に引き込まれてしまって汚れ役も気にならなくなり、結末の切なさも相まって、最後には、この夫の心情に共感してしまった。最近は、レオンの映画を見ていると、つい「役を演じているレオン」を意識してしまうんだけど、この映画では本当に登場人物ユー・ファイを見ていた気がする。台湾金馬賞・最優秀男優賞受賞も納得の名演技です！
●あらすじ●
妻の失踪を機に悪夢に悩まされる夫。一方、路上で目覚めた妻は一切の記憶を無くしていた。街を彷徨ううち、自分の身に起きた異変に気付く。
●あらすじ●
伝統芸能の人形使いが謎の死を遂げた。彼の残した人形には呪いの噂があった。人形に魅せられた仮面舞踏家が手に入れると、やがて身辺に奇怪な出来事が起き始める。
●映画のつぼ●
香港編、最後の最後に暗示される驚愕の事実が、夫婦の強い結びつきと、不幸なまでのすれ違いという結果を、より一層、物悲しく浮かび上がらせる。どう考えても変質者で犯罪者の夫なのに、見ているうちに共感し、彼らのファンタジーを信じてみたくなり、悲しい結末に切なさがこみ上げてきた。レオンは狂気迫る哀れな（けれど純真な）男を見事に演じている。死体役の妻を演じたユージニア・ユアンも、ほとんど動きや表情がないにも関わらず控え目な演技がむしろ印象に残った。韓国編は、血みどろの映像や死体などのイメージで怖さを盛り上げるが、物語自体に感動はなかった。タイ編は、伝統文化をアピールする映像美に引き込まれたものの、人形の呪いという設定がありきたりなため物語は退屈だった。
何度でも言うけど、本当に香港編だけで単独作品にしてほしかった！元々、ピーター・チャンの狙いは、他国の人気監督と組むことでその国の観客にアピールすることだったそうで、それは、香港、タイ、韓国でヒットしたことで一応の成功だったと言えるだろう。ただ、残念ながら蚊帳の外となった日本では、宣伝も中途半端で、注目を集めにくい形となってしまった。（最初の構想では日本が入るはずだったらしい。『三更』第二段では三池監督が参加）
韓国編、タイ編とも凡作、駄作で、それに足を引きずられるように香港編までが埋もれてしまうのは本当に惜しい。香港編がもし単独作品だったら、「クリストファー・ドイルのカメラ」というだけでも固定ファンには十分アピールできるし、純愛ホラーという新鮮な内容でも、もっと人を呼べたのではないだろうか。何よりもレオンの素晴らしい演技を、もっと多くの人に見て欲しい。
DVDビデオ発売のときは、どうか上手く宣伝してください！＞角川